【ネタバレあり】映画「イソップの思うツボ」を見て

2018年に映画界を沸かせた「カメラを止めるな!」を監督した上田慎一郎と浅沼直也、中泉裕矢がタッグを組んだ「イソップの思うツボ」を見てきたので、感想を書いていこうと思います。例によって、ネタバレが含まれるため、未視聴の方はご注意を。

 

評価と感想

評価

★3.8/5.0

感想

一言で言えば「十分面白かった」です。ストーリーは、個人的に好きな「どんでん返し系」だったし、ひっくり返された時の「なるほど、そう来たか!」という感覚は、なかなか気持ちよかったです。

キャストは、今作でも「カメ止め」と同様に、ほとんどが無名の方で固められていましたが、それぞれとてもハマり役で、特に亀田美羽役の石川瑠華は、物語の前半パートと後半パートでまるで違う役どころを、見事に演じていました。また、兎草早織役の井桁弘恵のキラキラ女子大生っぽさも非常に良かったと思いました。 

ストーリーも、予告編の段階で「騙されるな!」と謳っていた事と上田監督という事で、一筋縄には行かないんだろうなと予想した上で鑑賞しましたが、学園恋愛モノと思わせてからの、家族間の復讐物語への舵の切り方は、良い意味での裏切りだったと思いました。

特に亀田家にとって兎草家を「崩壊させる」ことが今回の復讐の目的でしたが、亀田美羽は兎草早織に極限状態で空砲の引き金を引かせ、生かしたまま「日本一仲の良い家族」の関係をバラバラにさせたシーンは、殺すよりもむごい「復讐」が成し遂げられた気がして、とても好きなシーンでした。

ちなみに、Twitterで感想を読んでいたのですが、とある方が「亀田家の母(亀田美紗子)と娘(美羽)のやり取りが、美羽の幻想なのは後出しジャンケンなのでは?」との指摘をしていました。確かに前半パートで、あたかも美紗子と美羽が会話している様なシーンが何度も出てきたにも関わらず、実は美羽の幻想だったというオチは、若干の後出しジャンケンっぽさはありました。ただ、前半パートで何回か登場する美羽が帰宅するシーンで玄関の電球が必ずOFFになっていて「普通、家に人がいる時に電源OFFしなくないか?」という違和感が自分にはありました。その違和感こそが美紗子が既に亡くなっている事のメタファーとも深読みできたので、ギリギリセーフかなと思いました。

あと、物語が進むにつれて、美羽の服装が緑→黄→赤に変わっていく辺りも、実は何かのメッセージが込められているのかな?とも思いましたが、考察には至りませんでした。(信号?)

本作は「カメ止め」とはテイストがかなり異なる上に、言ってしまえばジャンルも違う様に感じました。「カメ止め」が『どんでん返し系コメディムービー』ならば、本作はコメディ色は薄く、よりシリアス路線だと思います。それ故、「カメ止め」の様な「後味の良さ」・「爽快感」・「気持ちよさ」あたりを求めると大幅に肩透かしを食らう事になると思います。

Twitterでも、本作の評価はかなり賛否に別れていて、上田監督がハッシュタグによって評価を分類する試みを提案する程でした。

 

まだ未鑑賞の方は、是非、「カメラを止めるな!」を一度置いておいて、この映画を見て欲しいと思います。